今年も2018年締めくくりのARIAライブが始まります。PAD-EVTの領域では、この1年どのような変化があったでしょうか。1年前のARIA2017-EVTライブでは本邦初のSFAに対するDCB症例をライブで行いました。3学会合同で作成された適正使用指針に基づいたDCB手技がどのようなものなのか、ライブ症例を通じて学ぶことができたと思います。あれから1年、DCBはLutonixとImpact の2種類のDCBが臨床使用可能となり、本邦のSFA-EVTはNothing to Behindへと大きく変化しました。しかし、バルーン拡張後に解離を生じたときに使用するBail-outステントは本邦では保険償還が認められず、石灰化病変、長い病変に対しての使用には限界があります。このような病変にDCBを使用するためには適切なLesion Preparationが必要になります。どのようなLesion Preparationを施すことが必要なのか?世界中の医師が答えを求めています。11月24日(土)のARIA-EVTライブでは最初の3症例でライブを通じて、Lesion Preparationについて議論したいと思います。ライブ術者は時計台記念病院の浦澤先生、福岡大病院の杉原先生にお願いしています。DCBについては11月23日(金;祝日)午後より、DCBの経験豊富な施設の先生より6ヶ月の追跡結果も含めて、各施設のDCBの使用状況を紹介していただくセッション、石灰化病変に対する最適なLesion Preparationを考える座学のセッションを予定しております。
頸動脈狭窄症に対して頸動脈ステントが本邦で承認されて今年で10年が経過しました。本邦において関連学会合同で作成された頸動脈ステント適正使用指針には循環器医も深く関わりました。脳卒中の原因は心房細動のみならず、動脈硬化性疾患が原因となるものも少なくなく循環器医の関わりは必須であると思われます。しかし、現在、頸動脈ステント治療を日常臨床で行なっている循環器医は極めて少なくなっています。頸動脈ステント手技においては丁寧なカテ操作、複雑病変における繊細なガイドワイヤー操作が求められます。手技中の脳塞栓を予防するためにはフィルターのみならず中枢プロテクション法(MOMA system)が有用ですが、この総頸動脈と外頸動脈を同時閉塞させるバルーンがついているデバイスはカテサイズが太く、大腿動脈アプローチで9Frシースの挿入が必要となり、穿刺部出血性合併症が生じることが少なくありません。循環器医はPCIを大腿動脈アプローチから橈骨動脈アプローチへSlender化することにより予後に関わる出血性合併症を大幅に低下させたことを経験しています。4例目は頸動脈狭窄症に対するTRI でMOMAデバイスをシース無しで使用する頸動脈ステント手技を、ライブを通じて学び、循環器医のこの領域における役割を今一度考えたいと思います。術者は東海大学の伊苅先生と福岡山王病院の横井で行います。
ランチョンセミナーではボストン社の共催でEluvia—DESの最新情報を提供します。TCT2018で発表されたZilver-PTXとのHead-to-Headの比較試験であるIMPERIAL試験の結果は非劣性のみならず優位性を示す結果が報告されました。またVIVA2018では15cm以上の長い病変に対するレジストリー研究においても良好な開存性が報告され、この新しいDESには大きな期待が寄せられています。ポリマーの無いDESであるZilver-PTXは、今年5年のPMS(Post Marketing Surveillance)の追跡結果が報告され、長期の安全性が明らかとなりました。今後、DES をどのように使い分けていくのか、DCB時代のDESの位置づけはどうなるのか、皆さんと議論させていただきたいと思います。
CLI患者は高齢者、糖尿病、Post Marketing Surveillance Post Marketing Surveillance Post Marketing Surveillance透析患者の増加により増加の一途をたどっています。この病気に対する我々の貢献はEVTであり、標的血管はBTK-CTOと思います。5例目、6例目はBTK-CTOに対するライブ症例を行い、どのようにCTO病変をGW通過させるのか、順向性か逆行性か、逆行性であればDistal Punctureか、Trans-collateralか議論したいと思います。この領域はバルーンしか使用できるデバイスはなく、再狭窄は高率で、創傷治癒の過程に影響を及ぼしております。今年のVIVA2018でDCBのBTKに対するPOBAとの無作為比較試験で有用性の報告がなされました。BTKにおけるDCBの役割についてもライブ症例を通じて議論したいと思います。術者は福岡和白病院の伊元先生と福岡山王病院の横井が行います。
DCBはSFAのTASC A-B病変に対しては有効と思われますが、TASC C-D病変に対しては解離が生じるため適応困難となることは少なくありません。このような病変に対しては十分なLesion Preparationの後にRight thing to Behind治療が必要となります。Right thingはDES(Zilver-PTX)なのか?VIAVAHNなのか? GW通過はIntraluminalかSub-intimalか?7例目、8例目はSFAのTASC-D病変に対するライブ症例を通じて議論したいと思います。術者は時計台記念病院の浦澤先生と岸和田徳洲会病院の藤原先生が行います。VIAVAHNに関してはPMSが終了し、長期の良好な成績が報告される一方で血栓症の報告も散見します。23日(金)の午後にはVIAVAHN症例検討会を予定しており、経験豊富な先生より症例提示をいただき最適な症例選択、血栓症予防のために何をすべきなのかを議論する予定です。
9例目はPTS(Post Thrombotic Syndrome)に対する静脈ステント症例をライブで行います。海外では静脈インターベンションが急速に増加しており、患者さんのQOL改善に貢献し、各種静脈ステントのFDA承認取得が近づいています。本邦では急性期の深部静脈血栓症に対してはDOACの登場により大きく変化し、肺塞栓症の治療と合わせて循環器医の関わりが大きくなる一方で、慢性期の表在静脈疾患に対しては静脈瘤の治療として血管外科の先生が中心となって診療が行われています。しかし、PTSに代表される慢性期の深部静脈疾患に対してはどの診療科も十分な関わりを持てていないのが現状であると思います。福岡山王病院では血管外科の星野先生が慢性深部静脈疾患の診断治療に積極的に取り組んでおり、PTSで既存治療では静脈潰瘍が治癒せず、腸骨静脈に閉塞または高度狭窄所見がある患者さんに静脈インターベンション治療を循環器科で行っています。今後、本邦においても増加すると思われる静脈ステントに関して、その適応、手技についてライブ症例を通じて学びたいと思います。術者は福岡山王病院の横井と血管外科の星野先生で行います。静脈インターベンションに関しては23日(金)の午前からランチョンにかけて、静脈疾患に感心を持つ循環器医のために、深部静脈と表在静脈(静脈瘤)に対する座学のセッションも設けております。
最後の10例目は新しく本邦で使用可能となった、バルーン拡張型人工血管ステントVIAVAHN-BVXのライブ症例を行います。どのような症例にこのデバイスが有効なのか、石灰化を伴う腸骨動脈分岐病変の症例より学びたいと思います。術者は東京ベイ・浦安市川医療センターの仲間先生が行います。
ライブ症例は以上の10例、DCB(SFA TASC;A-C)3例、Radial-CAS1例、BTK2例、DES(SFA TASC;D)1例、VIAVAHN(SFA TASC;D)1例、静脈ステント1例、BVX1例を福岡和白病院、新古賀病院、福岡山王病院より中継します。この他にもARIA-EVTでは23日(金)は循環器医のために、CLIの創傷治療を学ぶセッション、大動脈疾患(B型解離、大動脈瘤)に対するステントグラフトの最新治療を学ぶセッション、EVT合併症のBail-outを学ぶセッションを企画しています。11月23日(金、祝日)、24日(土)の2日間、EVTの最新情報を学び、明日からの皆さんの患者さんの治療に役立てていただければと思います。
福岡でお待ちしております。
ARIA2018 会長 横井宏佳